東京造形大学
2015
年度担当授業
哲学T (山本恵子) 学部・前期・講義科目
[授業の目的] 哲学の基本的な考え方を学び,哲学の定義と意味について理解することを講義前半の目標とします。例えばある回では「宗教と哲学の違いは何か?」という問題について考察します。両者には重なり合う部分もありますが,根本において異なるものですから,この考察は哲学の独自性についていくばくかの知見を与えることになるでしょう。こうしてまずは哲学を楽しむ土台を作っていきます。その先には,ただ授業を「きいてわかる」ことに留まらずに,「考える」「疑う」「批判する」などの哲学的営為に親しむという目標が待っています。講義後半では,人間を幸福にする社会の実現可能性に目を向けた哲学者の理論を刺激剤として「philosophieren(哲学する)」ことへと向かいましょう。
[授業計画] 1.授業ガイダンスとイントロダクション:知を愛すること
2.古代の哲学:「アルケー」の探究 3.哲学の制度 4.イデア・芸術・国家 5. 「正義」と「幸福」の探究
6.中世の哲学:信と知 7.神から人間へ 8.哲学体系の中の芸術(1) カント・ヘーゲル
9.哲学体系の中の芸術(2) モリスと資本論 10.哲学体系の中の芸術(2) 資本論とユートピアの思想
11.理念と芸術(1) 12.理念と芸術(2) 13.共同幻想論 14.まとめ(課題回)
哲学U (山本恵子) 学部・後期・講義科目
[授業の目的]
〈わたし〉と〈他者〉というモティーフから導出される諸テーマについて,ニーチェ哲学や現代の「承認」論を手がかりに考察します。両者の「間(あいだ)」には共感,支配,理解などに媒介されて「関係」が生じますが,関係として形づくられる様々なシステムを「道徳」「権力」「大衆」といった観点からみていきましょう。〈わたし〉と〈他者〉のディアレクティークによってみえてくる世界は,〈わたし〉という存在を問い直すきっかけになるはずです。
[授業計画] 1.授業ガイダンスとイントロダクション 2.「わたし」とは何者か
3.生の意味への問い――虚無的な世界に生きる 4.共同性とは何か(1)――道徳に従って生きる
5.共同性とは何か(2)――市場(いちば)に生きる人々 6.「わたし」と「他者」
7.優越願望と対等願望(1) 8.優越願望と対等願望(2) 9.優越願望と対等願望(3) 10.優越願望と対等願望(4)
11.承認不安と「わたし」 12.「わたし」大好き 13.狂気の歴史 14.まとめ(課題回)
美学T (山本恵子) 学部・前期・講義科目
[授業の目的] 美しいと感じる気持ちは,わたしたちの生に何を与えるのでしょうか。また,現代日本において美しいということにいかなる意義が見出されているのでしょうか。本講義ではこうした問いを受講者のみなさんに投げかけます。なぜならわたしたちが思っているほど,美しいということの意義は自明ではないからです。〈美しくない芸術〉が一般化した現代において,その自明性はいっそう揺らいでいます。みなさんには,この問いかけを自分自身の問題として引き受けていただきたいと思います。そして,時代と社会の分析をつうじて,自分なりの答えを導き出してください。
[授業計画] 1.授業ガイダンスとイントロダクション:メタ美学――美学の意味を問う 2.美しい人
3.古代の美――秩序の美と狂気の美 4.美しいことは善いことか?善いことは美しいか? 5.美の条件 6.天才
7.「よい趣味」の基準(1) 8.「よい趣味」の基準(2) 9.「よい趣味」の基準(3)
10.アートワールド(1) 11.アートワールド(2) 12.アートワールド(3)
13.「かわいい」の美学 14.まとめ
美学U (山本恵子) 学部・後期・講義科目
[授業の目的] 美学史において生起した数多くの概念のうち,とくに本講義では毎回〈対概念〉をトピックとして提示し,考察します。トピックは具体的ですが,それらを理想と現実,客観性と主観性,絶対性と相対性,普遍と個,形式と内容などの本質的な対立諸概念に還元し,美や芸術の根本問題が何であったかを探究します。
[授業計画]
1.イントロダクション:美学と反美学 2.美/醜 3.欲望と愛――中世の美学
4.美か?わいせつか?(1) 5.美か?わいせつか?(2) 6.アヴァンギャルドとキッチュ 7. 伝統・流行・普遍
8. 作品vs芸術家(1) 9 .作品vs芸術家(2) 10.アポロン的なもの/ディオニュソス的なもの(1)
11.アポロン的なもの/ディオニュソス的なもの(2) 12.アポロン的なもの/ディオニュソス的なもの(3)
13.イギリスの庭園/フランスの庭園 14.まとめ
現代思想T (山本恵子) 学部・前期・講義科目
[授業の目的] 生活の中でふと生じる〈ちょっとした疑問〉を取り上げ,現代思想(哲学)の方法を用いて考察します。現代思想は雲の上の難解な理論ではなく,日常を省みるための有効かつ魅力的な言説に満ちた分野です。本講義ではその方法の基礎を学んでいきます。ただしそれは暗記をしたり,あらかじめ決められた答えを知ることではありません。方法を模索しながら,答えのみえない問いに向かって「考えること」そのものを享受してください。
1.ガイダンスとイントロダクション
2.モダンとポストモダン
3.身体の思想(1) 4.身体の思想(2) 5.身体の思想(3)
6.五感のエシックス(1) 7.五感のエシックス(2) 8.五感のエシックス(3) 9.五感のエシックス(4)
10.買うことの倫理(1) 11.買うことの倫理(2) 12.買うことの倫理(3) 13.買うことの倫理(4) 14.まとめ
現代思想U (山本恵子) 学部・後期・講義科目
[授業の目的] 第二次世界大戦前後の西洋思想,なかでもナチズムをめぐるドイツ現代思想が,未曾有の惨禍の中で人間存在と倫理について何を論じえたのかをみていきます。戦争に対する当時の哲学的アプローチを顧みながら,哲学の力を(あるいは無力を)看取するとともに,そこから未来への課題も読み取りたいと考えています。
[授業計画] 1.授業ガイダンスとイントロダクション 2.「ユダヤ」をめぐる哲学
3.戦後責任と「負い目」の問題(ヤスパース)
4.「凡庸な悪」(アーレント)(1) 5.「凡庸な悪」(アーレント)(2)
6. 「Die Weisse Rose」(ショル兄弟) 7.「アウシュヴィッツ以後の神」(ヨナス)
8. プロパガンダ芸術(1) 9. プロパガンダ芸術(2) 10.プロパガンダ芸術(3) 11.政治と芸術
12.「アンガジュマン」(サルトル)(1) 13.「アンガジュマン」(サルトル)(2)
14.まとめ:絶望と希望
記号論T (山本恵子) 学部・前期・講義科目
[授業の目的] ウンベルト・エーコの記号論を手がかりに,テクスト(作品)とその解釈をめぐる諸問題を考察します。作者(作り手)−作品(作られたもの)−観る者(受け手,解釈者)の間にはりめぐらされた多様な関係性について理解を深めることが目的です。記号論者・記号学者たちが展開した,記号とメ ディアの問題についても見識を広げましょう。
[授業計画] 1.イントロダクション 2.はじめに言葉があった
3.シニフィアン・シニフィエ・シーニュ・コード 4.キリスト教における「ことば」
5.エーコ:開かれた作品(1) 6.エーコ:開かれた作品(2) 7.エーコ:開かれた作品(3) 8.エーコ:開かれた作品(4)
9.意味のメカニズム(荒川修作)10.ソンタグの『反解釈』
11.映画記号学(1) 12.映画記号学(2) 13.紙の書物と電子書籍(2) 14.まとめ
記号論U (山本恵子) 学部・後期・講義科目
[授業の目的] 記号論Uは,人間が記号化する存在であることを知る授業です。記号の解読が,時代や文化の流動性の中で規定される意味体系に左右されることを理解しましょう。また芸術作品を記号として眺め,そのあり方について分類を試みます。
[授業計画] 1. イントロダクション 2. 広告の記号 3.記号のさまざまな作用 4.デノテーションとコノテーション
5.ファッション・恋愛・ロゴマーク(消費と記号) 6. 記号の国 7.神話作用
8. 象徴(シンボル)と寓意(アレゴリー) 9.イコノロジー(図像解釈学)(1) 10.イコノロジー(図像解釈学)(2)
11.ベラスケス 12.ポロック 13. マグリット 14. まとめ
C 群演習A3(死の文化史) (山本恵子) 学部・後期・演習科目
[授業概要]死は私にとって,決して知りえないものです。それゆえに哲学,宗教,そして芸術も,死を多様なイメージにおいて描き出してきました。死は絶対的な孤独といえますが,皆に必ず訪れるという意味では共同的性格を有しています。死は恐怖であり,ときには憧れの対象でもありえます。死に対するアンヴィバレントな感情は,人間存在を表現へと駆り立てつづけるでしょう。死の深淵は,日常生活において忘却されつつも,深く大地に伸びる文化の根なのです。授業では,数々の文化的事象をつうじて死の本質へと迫り,死の文化史を辿ることで文化の本質に近づこうとする,そうした双方向的で柔軟な考察に挑戦していきます。
[授業計画] 1. イントロダクション(1)授業内容の説明 2. イントロダクション(1)テーマと方法
3. 講義:死は無ではない 4. 講義:映画の中の死 5. 講義:愛と死の芸術史
6.〜13. プレゼンテーション&ディスカッション 14. まとめ
ハイブリッド特別講座A21(アーティストの生き方について)/総合講座C−29(アーティストの生き方について) (保井智貴・山本恵子・辻直之) 学部・後期・講義科目
[授業の目的]「アーティストの生き方」を主テーマとした授業を実施します。アーティストはそれぞれ異なった生き方をしています。作品と同様に社会との関わり方もそれぞれです。アーティストの作品制作にとどまらず,社会とのコミュニケーションも一つのテーマとします。またアーティスト以外にキュレーターやディレクター,ギャラリスト等の企画者側,ジャーナリスト等の視点も含め,美術あるいは芸術表現を通して,アーティストがどのように社会とコミットしているかを知り,各自の制作活動への可能性を探る機会とします。
[授業計画] 1. オリエンテーション 2. 〜13. ゲスト 14.総論
造形史 (山本恵子) 大学院(修士課程)・後期・講義科目
[授業概要]
19世紀〜21世紀における「かたち」の思想を講読し,モダンからポストモダンへの移行を造形という切り口から考察する。また講読(イン プット)と発表(アウトプット)を並行しておこなっていくことにより,受講者が芸術に対する自らの根本態度を整理するとともに,他者に対して明瞭に言語化する能力の向上を目指す。
[授業計画 1. 導入 2. プラトンのイデアとアリストテレスの形相(エイドス)3. 近代:芸術ジャンル論
4. モダンとポストモダン 5.ボードレール「なぜ彫刻は退屈か」(1846年) 6. グループ発表
7. グリーンバーグ「新しい彫刻」(1949年) 8. グループ発表 9. グループ発表
10. 芸術終焉論(1) 11. グループ発表 12.
芸術終焉論(2)
13.
グループ発表
14. 総論
大学院修士課程(美術専攻領域) 副査3名
早稲田大学
2015
年度担当授業(非常勤講師)
講座「美しい食の哲学」エクステンションセンター 全3回
【目標】
「美食」という慣れ親しんだ言葉を一度ふりかえってみましょう。わたしたちはほんとうに「美しく」食べているのでしょうか。「美しく」食べるとはどういうことなのでしょうか。人間にとって食べるということは、ただの栄養補給を超えた意味をもっています。食文化の現状と理想について哲学の観点から考えます。
【講義概要】
食の「真・善・美」をテーマにお話しします。いいかえると、食において「うそがないこと」「人を大切におもうこと」は、「美しく食べること=美しく生きること」につながるということです。「おせち料理」「自然志向」「ファストフードとスローフード」などさまざまな事例から美のイメージへ接近します。哲学というとむずかしく感じられるかもしれませんが、この講座では哲学ということばを「自分の問題として考える」という意味でとらえてください。この授業がご自身の食生活を客観的にみつめる機会になれば、こんなにうれしいことはありません。
【各回の講義予定】
第1回 2015/ 5/31(日) 「美しい」とは?「食べる」とは?
第2回 2015/ 6/ 7(日) 時代や文化によって食の価値観は変わる(1)
第3回 2015/ 6/14(日) 時代や文化によって食の価値観は変わる(2)
備考
【ご受講に際して】
◆授業は基本的に講義形式ですが、ときどき受講生側からもお話しいただき、さまざまな感想を取り入れながらすすめていきたいと考えています。授業のさいごには短い時間ですが、楽しく意見交換する時間もつくる予定です。(お話は強制ではありませんので、安心して受講してください。)
アートと感性への導入 (岩田圭一/山本恵子) グローバルエデュケーションセンター 春学期
[授業概要] アートは感性を先鋭化し、先鋭化された感性が社会に創造性をもたらす。本授業ではそうしたアートと感性の営為について検討します。アートが感性をいかに豊かなものにするか、いかに社会に影響を与えるものかという問題について幅広い視野で考察していきましょう。最初に教員による講義を行い、さまざまな時代の芸術思潮やその思想基盤を検討します。後半は主に受講生によるプレゼンテーション(発表)をおこないます。プレゼンテーションでは音楽、美術、映像、インスタレーションなどさまざまな分野を横断することになりますが、共通テーマとして「災害とアート」「福祉とアート」を設定し、理解を深めていく予定です。(なお受講者の関心に基づき他のテーマを追加する場合があります。)プレゼンテ―ション後にはディスカッションの時間を設けますので、積極的に発言してください。
[授業の到達目標] アートと感性の関係をインタラクティヴに考察し、アートの社会的機能について理解することを目標とする。
[授業計画][第1回]オリエンテーション(岩田圭一) [第2回]講義(山本恵子)
[第3回〜第14回]プレゼンテーション&ディスカッション [第15回]まとめ(山本恵子)
※第3回〜第14回までの間に、ゲストスピーカーによる講義を3回程度予定しています。
感性と死の問題への導入 (山本恵子) グローバルエデュケーションセンター 春学期
[授業概要] 死は人間を不可避的に規定します。しかしまた死を規定するのも人間です。何が死であり、死はいかなるものであるか、と。「死」が訪れることのない私たちの人生を想像してみてください。その場合の毎日とはどんなものでしょうか。「今」の意味とは、おそらくは「死」を想うこと(メメント・モリ)から始まるのかもしれません。本授業では、「死」のさまざまな様相の分析を目的とします。具体的には、日常性のコンテクスト、内面的なそれ、宗教的、芸術的、社会的、政治的、経済的なコンテクストといった観点から多面的に考察していきます。死は崇高であると同時に、きわめて現実的なものであることに気づくでしょう。いずれにせよ、死のイメージから始まって、死にかかわる現実を検討しつつ、死の根本構造を解き明かすことが重要な課題となります。
[授業の到達目標]
1)様々な文化における死のイメージの差異をその宗教、文化、社会、経済的要因から解き明かすことができるようになる。
2)死に対する明快な見解を、論理的かつ説得力を持って表明することができるようになる。
3)人間をはじめとする生き物の死についての議論を通じて、様々な世代、社会層、異文化への理解を深める。
4)この種のテーマに関するプレゼンテーション能力の向上を目指す。
[授業計画] [第 1回] 導入
[第 2回] ジャンケレヴィッチ『死』:1・2・3人称の死と「あった」の事実性
[第 3回]〜[第14回]プレゼンテーションとディスカッション [第15回] まとめ
なお、授業第3回〜第14回までの間に、ゲストスピーカーによる「宗教における死」の講義を2回程度予定しています。
放送大学(長野学習センター) 2015年度担当授業(非常勤講師)
芸術の哲学 (山本恵子) 集中講義・面接授業
[授業概要]
芸術作品を「哲学」のフィールドから考察します。芸術の本質について根本から問いかけてみましょう。それは、芸術が人間の生の意味にどのように関わっているのかを問う営みでもあります。受講者のみなさんにはさまざまな現代アートを鑑賞していただくとともに、「芸術とは何か」という問いを熟考することの喜びに触れていただきたいと思います。
[授業計画]1. 「芸術」と「非芸術」を分けるもの 2. 芸術の意味 3. 芸術と哲学、芸術と美学
4. 芸術によって生きる(1)事例:ヘンリー・ダーガー 5.芸術によって生きる(2)イメージの力
6. 鑑賞する力(1) 7. 鑑賞する力(2) 8. 創造の本質
LECTURE
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