授業トップに戻る

 


授業(早稲田大学・2011年度)

 


担当科目

生活環境美学(山本恵子)

文化構想学部 春学期

授業概要 
 本講義においては「美しさ」という言葉の広がりをわたしたちの生活環境の場面のうちで考えてゆきます。
 「美しさ」は、一般的に、芸術に特権的に帰せられます。しかしながら、そのような美の既成観念は、じつは美の広がりのごく一部ないしは特定の時代の一局面でしかないといえます。この作品(モノ)は美しい、といった既成観念を捨ててください。
 むしろ美の広がりは、わたしたちを取り巻く世界、わたしたちの身体、そして私たち自身につねにかかわるものであるといえるでしょう。わたしたちの習慣化されたしぐさの継承、モノやお金やことばによるコミュニケーションのたえざる流れ、可視・不可視を問わず張り巡らされたネットワーク、制度とそれを超えでる力との葛藤――これらは美の基盤であり、同時に美的対象でありえます。もちろんこれが、文化の本質でもあります。そして「美しいもの」は、モノとして美しいのではなく、絶えず動いてゆくわたしたちの生活環境の中ではじめて美しくもなり、醜くもなるのです。
 こういった観点を前提としつつ、個人のマナーから身体、衣食住、芸術、宗教、果ては国家の美までを、射程とします。

授業の到達目標
 本講義では身近な生活環境を、自己と自己の文化を知るために開かれたひとつのトポスとしてとらえることが要求されます。そのために、
(1)日常のさまざまな美的情報・感性情報に敏感であること (2)そこに社会問題、倫理的問題、宗教的問題などとの連関を見出すこと (3)見出された問題を学問的方法論を用いて考察・批判すること
をつうじて問題認識力と思考力を高め、生活における美の価値について理解することが目標です。

-----------------------------------------------
授業計画
[第 1回] 「生活環境美学」とは何か
[第 2回] 消費における〈無感性化〉
[第 3回] 日常とアートとの間
[第 4回] 商品化される自然
[第 5回] 美は実用的なものか?
[第 6回] 陶酔する日常と非日常(1)ギリシア悲劇における陶酔
[第 7回] 陶酔する日常と非日常(2)ジャニーズコンサートとショッピングモール
[第 8回] 陶酔する日常と非日常(3)陶酔とカリスマ
[第9回]〈日本的感性〉について考える(1)滅びの美学「パトラッシュ」
[第10回]〈日本的感性〉について考える(2)滅びの美学
[第11回] 食と日本の現在
[第12回]〈日本的感性〉について考える(3)「カワイイ」批判:リチーと村上隆
[第13回] 住環境をめぐる趣味論・まとめ

⇒東日本大震災による全学休講:不足する2週間分の授業内容は、レポートの提出により確保します。
詳細は、教場にて指示します。

 

美学2(山本恵子)

文学部 秋学期

授業概要
 世界に、〈誰が見ても美しい絵画〉は存在するのでしょうか? また、〈誰が聞いても美しい音楽〉は存在するでしょうか? 芸術に関する美的判断においては、こうした普遍性が求められ、美しいものの法則性やパターンについて古来より研究されています。しかし実際には美的判断において、個人差・世代差・地域差などによる違いが生じることも少なくありません。美学という学問は、こうした意味での美の不確定性に常に晒され続けてきた、といえます。本授業ではこのことを前提として、美の感受や芸術理解の普遍性に関する多様な美学的テーマについて論じます。
 具体的には、社会階級によって芸術嗜好は異なるのか?というテーマや、何が芸術の価値を決定するのか?というテーマなどを論じます。(詳細は、オンラインシラバスの授業計画を参照してください。)また、各回の授業ごとに質問や見解を書いたレヴューシートを提出していただくことで、なるべく対話形式に近い授業形態を模索したいと考えています。

授業の到達目標
 美学の基本概念を習得し、「美」「趣味」「芸術」をめぐる根本問題の概要を理解することにより、美学を研究するための礎となる力を身につけることを到達目標とします。
-----------------------------------------------
授業計画
第 1回] 導入(1)――感性を言葉にすること
[第 2回] 導入(2)――美学史概観
[第 3回] 美の根拠(1) 天才性をめぐって
[第 4回] 美の根拠(2) ものが美しく見えるということ(カント/ニーチェ)
[第 5回] 趣味論(1) よい 「趣味」とは何か(カント/ヒューム)
[第 6回] 趣味論(2) 趣味は社会階級・文化資本に基づく(ブルデュー/グリーンバーグ)
[第 7回] 趣味論(3) 現代的趣味の諸相――美的カテゴリーの現在
[第 8回] 趣味論(4) 現代的趣味の諸相――美的カテゴリーの現在(続き)
[第 9回] 「流行」と「伝統」をめぐる芸術の哲学(ニーチェ)
[第10回] 芸術の制度(1) 「アートワールド」(ディッキー/ダントー/村上隆)
[第11回] 芸術の制度(2) アートを語る力
[第12回] 芸術の制度(3) 芸術文化政策
[第13回] 芸術の制度(4) 芸術とナショナル・アイデンティティ(1)
[第14回] 芸術の制度(5) 芸術とナショナル・アイデンティティ(2)
[第15回] 総論







複合文化論系演習 感性哲学1(美と芸術の感性研究)
(山本恵子)

文化構想学部 春学期

授業概要
 芸術の本質が創造性にあるとすれば、その本質ゆえに、芸術の定義(「芸術とは-である」)は常に更新され続けなければならない運命にあります。なぜなら、既存の芸術を超えて新たな芸術が生み出されるときには、同時にそれに合う芸術の定義が新たに必要とされるからです。本演習は芸術作品を理解する基盤となるこの〈芸術の定義〉を問題にします。とくにデュシャン以降の現代アートをめぐる状況において一層複雑化する〈芸術の定義〉の可能性を探ることを目的とします。
 授業の前半では、有益な議論を実現するために必要な基礎知識を蓄積するべく、20世紀後半のさまざまな芸術理論について論じられているテクスト(シンシア・フリーランドの著書『でも、これがアートなの?――芸術理論入門――』)を用いて授業を進めたいと考えています。この書は、古代・中世・近代・現代の基本的な芸術理論に加えて、ジョン・デューイ、ジャン・ボードリヤール、クレメント・グリーンバーグ、アーサー・ダントー、ジョージ・ディッキーら、20世紀の思想家・批評家たちの諸理論にも言及しています。
 授業の中盤・後半では、現代アートの諸相の中から各自の関心に基づくテーマを自由に設定し、プレゼンテーションをおこなうこととします。
 演習形式の授業ですから、現代アートを鑑賞する際の解釈の仕方や疑問について、受講者のみなさんが率直に意見を交換できる場にしたいと思います。
授業の到達目標
 現代アートに関する知識を習得し、その知識を活かしたプレゼンテーションとディスカッションを行う中で、アートと社会の関係、アートと生の関係を理解することが到達目標です。

-----------------------------------------------
授業計画
[第 1回] イントロダクション:「おぞましいもの」のアート
[第 2回] 「コンセプチュアル・アート」
[第 3回] 「落書き」のアート
[第 4回] プレゼンテーション(1)
[第 5回] プレゼンテーション(2)
[第 6回] プレゼンテーション(3)
[第 7回] プレゼンテーション(4)
[第 8回] プレゼンテーション(5)
[第 9回] プレゼンテーション(6)
[第10回] プレゼンテーション(7)
[第11回] プレゼンテーション(8)
[第12回] プレゼンテーション(9)
[第13回] プレゼンテーション(10)

⇒東日本大震災による全学休講:不足する2週間分の授業内容は、レポートの提出により確保します。
詳細は、教場にて指示します。


 

人文演習IV A(山本恵子)

第一文学部 通年                   

(副題:人間と文化)

授業概要
 本演習では、人間と文化について、幅広く考察します。履修者には、各自の関心からくるテーマを設定したうえで口頭発表を行っていただきます。言語、民族、芸術、歴史、宗教、風俗――どのような切り口でも構いません。さらに全員で、その内容に関するディスカッションをおこないます。また、選択したテーマにふさわしい方法論についても、一緒に検討していきましょう。皆さんが発表やディスカッションに積極的に参加されることを期待しています。
授業の到達目標
 プレゼンテーションとディスカッションに必要な人文科学の知識を深めます。また狭い分野に留まることなく多種多様な事象を考察することにより、幅広い視野を獲得することを目指します。

-----------------------------------------------
授業計画
第1回〜第2回 イントロダクション
第3回〜第5回 基礎文献講読
第6回〜第15回 プレゼンテーション

※うち、震災による休講が2回

--
第16回〜第22回 文献講読
第23回〜第30回 プレゼンテーション

 

芸術論(山本恵子)

文化構想学部 秋学期

(副題:コミュニケーション・メディアとしての現代アート)
授業概要
 本講義では、現代アートの社会的機能を理解することを目的に、さまざまな芸術作品を題材として取り上げ、その形式と意味について論じます。
 芸術の意味をめぐっては、社会のコンテクストを離れて、「芸術のための芸術(l'art pour l'art)」という一つの自律的領域を形成することが至上命題とされた時代もあります。しかし芸術は、他のあらゆる活動と同様に、社会の内部で営まれる活動であり、古代より各時代・地域の状況に惹起され、多様な社会的機能を負ってきたのです。例えば芸術はときに社会の理想を表現し、社会を纏める媒体となります。逆に社会を批判し、社会の方向性を問う媒体となることもあります。そしてそうしたことが可能なのは、芸術が、本来的に異なるバックグラウンドを持つ人間同士の間で、各々の立場を止揚してコミュニケーションをとるための触媒となりうるからです。それゆえ本講義では、国家、民族、宗教、政治、世代、性、家庭等のギャップに根ざし深刻化している社会問題と現代アートとが繋属されて生まれる有機的トポスをめぐって、芸術の存在意義を論じることになるでしょう。
 具体的には、20世紀後半以降の現代アートの潮流を中心に論じますが、単に現代アート史として概観するのではなく、芸術によってさまざまな不和や齟齬を飛び越えて人と人とがつながれ、芸術がことばを超えた〈ことば〉となる瞬間を感受する場にしたいと考えています。
授業の到達目標
 現代アートの諸作品についてその時代状況や技法に関する知識を身につけるとともに、その社会的機能について理解を深めることが本講義の到達目標です。
-----------------------------------------------
授業計画
[第 1回] 導入(1)
[第 2回] 導入(2)
[第 3回] 問い:アートは社会を変えられるか?
[第 4回] アーティスト:ヨーゼフ・ボイス(1)
[第 5回] アーティスト:ヨーゼフ・ボイス(2)
[第 6回] 芸術の社会化――「障害者アート」への取り組み
[第 7回] ANPO
[第 8回] アーティスト:アイ・ウェイウェイ
[第 9回] アーティスト:ハンス・ハーケ
[第10回] サルトル:アンガジュマンの文学         
[第11回] アートの公共性:芸術の環境化/環境の芸術化
[第12回] ジェンダーの美学
[第13回] 自己/コミュニケーション(草間彌生)
[第14回] 生と死のコミュニケーション(荒川修作、ヴァルター・シェルスほか)
[第15回] “紐帯”としての芸術

 

担当科目(複数教員担当科目)

複合文化論系演習 感性哲学3(産業・技術・地域社会にかかわる感性研究)(山本恵子/土井善晴)

文化構想学部 春学期

授業概要
 本演習では、食文化(Food Culture)・食産業(Food Industry)に関するさまざまな事例を取り上げながら、人と物との関係から人と人との関係へと視野を広げていきます。
 たとえば現代日本の外食産業について考察することは、現代日本の家族の「かたち」を可視化する契機にもなるでしょう。そしてそこから家族というコミュニティが、ときに経済を介して、必ずしも人間に幸福をもたらさない「かたち」――「放食」「崩食」「拒食」など――へと導かれることがあることも事実なのです。もちろんこれらは本授業が扱うテーマの一例にすぎません。おもてなし、ホスピタリティ、サービスといった人間の関係性を前提とするテーマについても考察することになるでしょう。時代、地域、経済、技術等の観点を視野に入れながら、「生きること」の問題へとつながる幅広い領野を、受講者の関心に応じて検討していく予定です。
授業の到達目標
 教員による授業と学生による口頭発表を基にディスカッションをおこない、食文化への知識を獲得し、食を介したコミュニケーションの問題へと議論を深めることが到達目標となります。
-----------------------------------------------
授業計画
[第 1回] イントロダクション
[第 2回] 導入――食文化研究の基礎理論
[第 3回] 調理に関するケーススタディ
[第 4回] グループワーク
[第 5回] グループ発表(ないし個人発表)(1)
[第 6回] グループ発表(2)
[第 7回] グループ発表(3)
[第 8回] グループ発表(4)
[第 9回] グループ発表(5)
[第10回] グループ発表(6)
[第11回] グループ発表(7)
[第12回] グループ発表(8)
[第13回] 総括

⇒東日本大震災による全学休講:不足する2週間分の授業内容は、課題の提出により確保します。
詳細は、教場にて指示します。


感性と文化
(酒井紀幸/大久保良峻/山西優二/山本恵子)

オープン教育センター 春学期(日本)・夏季(ドイツ・トリア大学)

(副題:メンタリティと制度)
授業概要
 現代において自分たちの文化を論じるということは、単に自分たちの属する1つの国、1つの文化のうちにとどまったままで可能となるものではありません。実際自分たちの文化のみを自分たちの言葉で、自分たちだけが理解できる論理で理解するという考え方が、その文化の本当の姿を覆い隠してしまうことになる場合がしばしばあります。そしてこのことが時として、他の文化との摩擦を生み出す原因ともなっているわけです。
 この授業は、ドイツの中でもルクセンブルクやフランス国境近くに位置するトリア大学の協力の下、実際にドイツに赴き、ドイツの大学で、ドイツ人を始めとするさまざまな外国人(教員および学生)とともに日本の文化、制度とメンタリティーについて学び、考え、議論しようとするものです。たくさんの国々に接したヨーロッパの町から、日本の文化について考えることは、日本にいてそれについて考える場合とは少しばかり意味が違ってくるかもしれません。
 わたしたちは自分たちにとって当たり前と思われることを何1つ疑うことなく正しいことと思い込んでしまっているかもしれません。でもそれはもしかすると、非常識なことなのかもしれない、と。ここから出発しましょう。そして最終的には、日本の文化を起点として他の文化の深層を理解してみようと考えています。わたしたちは、何を見、そして何を見ようとしないのか。そして他の文化圏の人々は…。
 
(滞在期間) 2011年8月1日より8月31日の間の2から3週間程度を予定。
 (対象および要件)
 1)授業は日本語ないしは英語で行われますので、現時点でのドイツ語の能力は問いません。また多少のドイツ語を行く前に勉強したい方には、サブゼミを提供する予定です。また現地にてドイツ語の授業(月から木までの午前中)を受講することが望ましいでしょう。
 2)授業内容はさまざまな分野にまたがりますので、特に専門は問いません。異文化コミュニケーション、日本、東洋、ドイツ、ヨーロッパに関心を持つ人はもちろんですが、文化に関するさまざまな領域に関心を持つ人、さらには法律、経済等のこれから国際的な感覚が必要とされる分野に関心を持つ人などを対象とします。もちろんこれから長期留学や外国でのインターンシップなどを考えている人にも有意義でしょう。2011年度秋学期から留学を考えている方は、ご相談ください。
 (費用)
 基本的には学生寮(個室)に宿泊するための費用(月から木は朝食つき)と授業の一環として見学等を行なう場合の参加費、さらに2-3週間程度のドイツ語講習の費用を含めて23万円程度(為替レートによって差異が生じる場合があり)です。このほかに航空運賃が必要となります。8月の運賃の高い時期になりますが、前年度の相場からすると15万円から23万円前後(経路および航空会社によって異なる)でドイツまでの往復航空券は購入できます。昨年度の実際の金額はおよそ12万円でした。詳細については4月に参加者の意見を聞きながら決めてゆく予定です。
 なお昨年は、フランクフルトからザルツブルク、ウィーン、アウシュヴィッツ、クラクフ、ベルリンを訪問したあと、チャーターバスでトリアにはいりました。またケルン、ストラスブール、ルクセンブルク、ハイデルベルク訪問などの小旅行、数回の食事会などが催されました。さらに、ミュンヘン・ニュルンベルク4泊5日の旅行もありました。これらの費用(ホテル代・チャーターバス代・鉄道運賃を含めて)と寮費および語学研修費で総額はおよそ35万円でした。ただし、今年度に関しては、現在の為替相場を基準に計算すると、金額は予想し難いのですが、35万円から37万円の間と考えております。(また昨年はこれとは別にオプションとして、パリへの小旅行も行っています。)

授業の到達目標
1)EU諸国の歴史を学び、実際に訪問することで、様々な言語と文化が隣り合う文化構造への理解を深める。
2)日本語、英語、ドイツ語、フランス語等の諸言語を自らの語学の学習経験に応じて用いることによって、シチュエーションに応じた言語選択とその使用の基礎力を養う。(但し、これらの言語はけっして必須要件ではない。)
3)様々な国の人々とのコミュニケーション能力の向上。
4)共同生活と共同作業を通じて、マネージメント能力の向上を図る。
5)プレゼンテーション能力の向上を目指す。




 

複合文化論系演習 パフォーミング・カルチャー論1(演じざるをえない人間とその文化)(山本恵子/河合薫

文化構想学部 秋学期

授業概要
 人間は他者との関係性の中で、はじめて自分になることができる。そして他者との関係性において、関係性を構築し継続させるために、なんらかの演技をせざるをえない。本授業では、なぜ人間は演じざるをえないのかという本質的問題を論じる。
 こうした議論を遂行するために、さしあたって本授業ではsocial capital, sense of coherenceといった概念について学ぶことになるであろう。「信頼、規範、ネットワークといった社会組織特徴であり、人々の協調行動を促進させることで社会の効率を高める」という概念であるsocial capitalと、「人生にあまねく存在するストレスや困難・危機から、自らを守るだけでなく、それを自らの成長や発達の糧、喜怒哀楽のある豊かな人生の糧に変える力」であるsense of coherenceを出発点として、個人の視点からだけではなく、support network、社会という観点からも「演じること」の意味を解明する。
授業の到達目標
 意味のある生き方ができる環境、演じ方を学ぶことで、人が人として生きること、働くこと、健康であることの重要性を理解する。 -----------------------------------------------
授業計画
第 1回]自分とは何者なのか? アイデンティティの確立
[第 2回]社会の中の自分-働くとは?
[第 3回]演じること/生/死
[第 4回]Sense of Coherence-危機をチャンスにする力
[第 5回]Social capital -人と人のつながりに投資する
[第 6回]社交の哲学(1)
[第 7回]発表1
[第 8回]社交の哲学(2)
[第 9回]発表2
[第10回]発表3
[第11回]発表4
[第12回]発表5
[第13回]発表6
[第14回]発表7
[第15回]総括・ディスカッション


感性と死の問題への導入(酒井紀幸/山本恵子)

オープン教育センター 春学期              

授業概要
 死は人間を上可避的に規定します。しかしまた死を規定するのも人間です。何が死であり、死はいかなるものであるか、と。「死」が訪れることのない私たちの人生を想像してみてください。その場合の毎日とはどんなものでしょうか。「今」の意味とは、おそらくは「死」を想うこと(メメント・モリ)から始まるのかもしれません。

 本授業では、「死」のさまざまな様相の分析を目的とします。具体的には、日常性のコンテクスト、内面的なそれ、宗教的、芸術的、社会的、政治的、経済的なコンテクストといった観点から多面的に考察していきます。死は崇高であると同時に、きわめて現実的なものであることに気づくでしょう。

 いずれにせよ、死のイメージから始まって、死にかかわる現実を検討しつつ、死の根本構造を解き明かすことが重要な課題となります。
授業の到達目標
1)様々な文化における死のイメージの差異をその宗教、文化、社会、経済的要因から解き明かすことができるようになる。
2)死に対する明快な見解を、論理的かつ説得力を持って表明することができるようになる。
3)人間をはじめとする生き物の死についての議論を通じて、様々な世代、社会層、異文化への理解を深める。
4)この種のテーマに関するプレゼンテーション能力の向上を目指す。


<自己>の文化と<他者>の文化
(酒井紀幸/磯野真穂/上野和昭/神岡理恵子/小林信之/島田征夫/ジラール フレデリック/田中人/寺崎秀一郎/西村正雄/ブガエワ アンナ/箕曲在弘/宮城徳也/山本恵子

文化構想学部 春学期              

授業概要
 あなたの隣にいる人も「他者」です。また異文化、異言語、異なる文化的伝統や生活習慣に属する人々も「他者」でしょう。それでは「自己」は「他者」なくしてはありえないのでしょうか。現代において(文化的)アイデンティティをどう考えればよいのでしょう。「他者」との出会いや対比によって「自己」(とその文化)は新たないかなる存在として立ち現れてくるのでしょうか。「他者」(の文化)と触れ合うことで「自己」(の文化)はどのように変容してきた(変容しつつある)のでしょうか。そして「自己」と「他者」とのコミュニケーションはいかなる言語(通訳・翻訳)で行われるのでしょうか。「自己」と「他者」の出会いにはどのような誤解やコンフリクトが生じてきたのでしょう。異文化間のコンフリクトをどのように調停することができるのでしょう。
 この授業は「自己」と「他者」というキーワードをめぐって、主として文化構想学部の複合文化論系に関わる教員が、歴史的展望を語り、また現代の文化現象について多様な角度からアプローチします。受講者は、この、現代人にとってますます切実になる問題をどのように解いていけばよいかについての、毎回異なる、そして全体として豊かなヒントを得ることができるでしょう。これまで考えてきたことが確認される場面もあるでしょう。思ってもみなかった新鮮な切り口に驚かれる回もあるでしょう。受講者はこのオムニバス形式の授業によって、複合文化論系の教員がどんなことを考え、どんなテーマで研究を進めているのか、その一端に触れることができ、また眼前に広がる主として人文科学の研究領域の広さと深さにめまいのする思いを味わうことにもなるでしょう。そしてそこから文化構想学部、文学部のたくさんの授業との様々なレベルの有機的関連を見渡すことが可能になるでしょう。
授業の到達目標

1)「文化」について、一定の視点から明快な議論ができるようになるための知識を習得し、その基礎能力を養成する。2)異文化間コミュニケーションの観点から、様々な文化の特質を分析し、その相互理解の可能性の基盤を発見する。3)様々な文化現象を通じて、伝統と革新の系譜を探る。
山本担当回
12.文化的共生の哲学――哲学は「戦争」をどう取り扱ってきたのか(ヤスパースとナチズム、ハンス・ヨナス『アウシュヴィッツ以後の神』、そして日本)

 

感性への問いの射程
(酒井紀幸/桜井洋/池田晶子/平山敬二/山本恵子)

オープン教育センター 春学期

講義概要
 今日さまざまな形で「感性」という言葉が用いられ、論じられています。芸術のみならず教育、産業、政治等々においても。一方では感性の喪失が叫ばれ、他方ではよいことのすべてが感性に帰せられています。しかし感性とはいったい何なのでしょうか。芸術に対する理解力?社交性?倫理性?感覚の鋭さ?むしろ日本語で「感性」という場合にはもっと幅広い意味が隠されているようです。もしかすると生きるためにもっとも重要な隠れた力なのかもしれません。なるほどそれは美を発見する技であると同時に、美しく生きる技であるかもしれません。
 この授業では、感性についての歴史的な基礎知識を概観するとともに、感性への問いの射程を見極めるべく、毎回さまざまな角度から感性について考えてゆきたいと思います。もちろん芸術についても。しかし例えば社会の様々な規範と感性、法律と感性、住まいと感性、教育と感性、食と感性、コンピュータと感性といった観点からも「感性」という言葉の広がりと内実、そしてそこからわれわれが何を求めているのかを考えます。そのために時に応じていろいろな領域の方々をお招きして、その方たちにとっての「感性」を論じていただき、それについて皆さんとディスカッションを行おうと考えています。
授業の到達目標
1)感性という概念の持つ広がりと、社会的機能を理解する。2)感性に関わる事象を複合的な視点から捉え、理解する。3)感性的領域について、そこから得た知識を応用する能力を養成する。
山本担当回
1.「感性」の概念史と感性価値創造の現在
他、ゲストスピーカーのコーディネーター


 

感性への問いの現在
(酒井紀幸/桜井洋/志岐幸子/森利枝/山本恵子)

オープン教育センター 秋学期

講義概要
 
今日さまざまな形で「感性」という言葉が用いられ、論じられています。芸術のみならず教育、産業、政治等々においても。一方では感性の喪失が叫ばれ、他方ではよいことのすべてが感性に帰せられています。しかし感性とはいったい何なのでしょうか。芸術に対する理解力?社交性?倫理性?感覚の鋭さ?むしろ日本語で「感性」という場合にはもっと幅広い意味が隠されているようです。
 この授業では、現代における感性への問いの「問われ方」を見極めるべく、毎回さまざまな角度から感性について考えてゆきたいと思います。前期科目「感性への問いの射程」とは多少異なる観点から感性を考えてゆく予定です。できる限り「現場」にスポットを当ててみましょう。音楽、スポーツ、料理、宗教からサブカルチャーなどへの考察も視野に入ってきます。比較文化ないしは異文化コミュニケーション的な観点からもあわせて考えていきます。「感性」と聞いて、英語ではどんな語を思い浮かべますか?この答えをこの授業のなかで探してみてください。本授業の進め方も前期の「感性への問いの射程」同様、時に応じていろいろな領域の方々をお招きして、その方たちにとっての「感性」を論じていただき、それについて皆さんとディスカッションを行おうと考えています。
授業の到達目標
1)感性という概念の持つ広がりと、社会的機能を理解する。2)感性に関わる事象を複合的な視点から捉え、理解する。3)感性的領域について、そこから得た知識を応用する能力を養成する。
山本担当回
1.感性価値創造の現在(2)
2.感性価値創造の現在(2)続き

他、ゲストスピーカーのコーディネーター

〈さらす/覆う〉の構造学 (酒井紀幸/青木律/池田晶子/かづきれいこ/神末武彦/清水哲朗/滝澤直己/田口淑子/中島智章/ハックナー トーマス/武藤大祐/山本恵子/渡辺万里)

文化構想学部 春学期

(副題:欲望とアイデンティティ)
講義概要
 文化現象の根本構造を検討することがこの講義の課題です。たとえば、化粧で肌を「覆うこと」と素顔の肌を「さらす」こととは、それぞれのコンテクストによってさまざまな意味を持ちうるのではないでしょうか。見せることと見せないこととは、対極にありながらもその相関的関係の中で私たちにさまざまな感情や欲望、判断や想像を喚起するわけです。もちろんファッション、衣食住、芸術、宗教、政治、社会、コミュニケーションなどの文化的領域全般においても同様の構造を見出すことができるでしょう。本講義においては、これらの領域のトピックスについて具体的に考察を進めることによって、さらすことと覆うことの緊張関係の中でどのように文化が構成されているかを検証することになります。
授業の到達目標
 <さらす>ことと<覆う>ことの構造のうちでさまざまな社会現象を考察する。
山本担当回
1. 〈さらす/覆う〉の哲学――本来的自己への問い――

2. 芸術家は自己を〈さらす〉べきか?



美意識の比較研究
(酒井紀幸/大久保良峻/桜井洋/陣野英則/山本恵子)

オープン教育センター 秋学期

授業概要
 
美意識の相違はどこからくるのであろうか。この古くて新しい問題を各領域の教員が問いかけることによって、社会、文化、産業、技術、集団、個人などが今日において抱える問題の諸相を解き明かすことが、本講義の課題です。とりわけ欧米と日本が、主たるフィールドとなるでしょう。そのさい伝統と美という「魔術的な」タームに隠されている構造もまた明らかにすることになります。
授業の到達目標
1)文化をそれに固有のコンテクストにおいて的確に理解する基礎能力を身につける。
2)文化の相互関係性という観点から、異文化理解の可能性とその限界を具体的に把握する。

山本担当回
1.美か?わいせつか?(ダントーのメイプルソープ論)
2.アヴァンギャルドと
キッチュ

他、ゲストスピーカーのコーディネーター


祈りのメンタリティ                   (酒井紀幸/篠原菊紀/田戸大智/長屋房夫/柳澤正志/山本恵子)

文化構想学部 春学期                  

(副題:祈りの諸相―宗教と脳との対話―)
授業概要

 さまざまな宗教において「祈り」ないしはそれに類する行為は、重要なものとして位置づけられています。本講義においては、キリスト教ならびに仏教の諸教派・諸宗派における祈りの諸位相を具体的に分析します。
 さらにそのうえで、宗教的な祈りは人間の脳の活動においてどのようなあり方を示しているのかを科学的な観点から考察しつつ、現実の私たちの生活における祈りの意味を新たな観点から検討します。

授業の到達目標

 祈りの諸相を宗教と科学の両面から検討する。
山本担当回
1.祈りの哲学的考察――戦争と祈り――


ボディイメージ
(酒井紀幸/青木律/かづきれいこ/山本恵子)

オープン教育センター 秋学期

(副題:身体と心の美しさ)
講義概要
 現代においては、美しくなければ、整っていなければ人間ではないかのごとく、さまざまなメディアから美しさに関する情報が浴びせかけられています。しかしながら「美しい」とか「整っている」とは、いったいどういうことなのでしょうか。この古くて新しい問いを医学、リハビリメイク、哲学・美学などの観点から総合的に検討してゆきます。
 授業の内容は具他的なものとなりますが、しばしば専門的になることもあります。とはいえ専門知識に関してはその都度できるだけわかりやすく解説していきます。
 受講者の皆さんは、できる限り自分でこの問題を考え、かつ現実の生活にフィードバックすることを心がけてください。
授業の到達目標
1)身体というもののもつ美しさを複合的な観点から理解し、現実の社会においてその理解を具体的に深めることできるようになること。
2)様々な領域の知と実践が、いかに深く連関しているかを自ら発見することができるようになること。

山本担当回
9.美容整形と現代アート(オルラン)
他、ゲストスピーカーのコーディネーター


食の文化      (酒井紀幸/杉山享司/鈴木晃仁/土井善晴/長屋房夫/馬場朗/森枝卓士/山本恵子/渡辺万里)

文化構想学部 秋学期                  

授業概要
 「食」は、感覚とりわけ味覚に訴えるものであると一般的に考えられています。しかしながら、感覚だけで「食す」人間がどこにいるでしょうか。食とは、いやおうなく地理的・歴史的背景をもち、それゆえ文化そのもののネットワークの中にあってはじめて意味を持つものであるといえます。
 本講義では食のシーン、食の器、食材、食をめぐる身体的作業、習慣、風土、医、宗教、感性、食産業、言語、差異化的趣味判断等、さまざまな観点から食のありようが検討されることになります。
 さらにこういった問題を考えてゆくために、さまざまな文化圏における食についてスポット的に焦点を当ててゆくことになるでしょう。取り扱うテーマは、多様となりますが、詳細についてはオンライン・シラバスを参照してください。
授業の到達目標

 食の問題を通じて、現代社会の諸問題を発見する。
山本担当回
1.わたしたちは何を食べるべきか

 

その他:


その他(ゲストスピーカー):

第一文学部卒業論文(主査)指導

「文化の哲学」(ニーチェの「文化」批判を読む)

 

 

 

 

 

Copyright(c)2010-Keikoyamamoto.com