生活環境美学 |
文化構想学部 春学期 |
講義概要
本講義においては「美しさ」という言葉の広がりをわたしたちの生活環境の場面のうちで考えてゆきます。
「美しさ」は、一般的に、芸術に特権的に帰せられます。しかしながら、そのような美の既成観念は、じつは美の広がりのごく一部ないしは特定の時代の一局面でしかないといえます。この作品(モノ)は美しい、といった既成観念を捨ててください。
むしろ美の広がりは、わたしたちを取り巻く世界、わたしたちの身体、そして私たち自身につねにかかわるものであるといえるでしょう。わたしたちの習慣化されたしぐさの継承、モノやお金やことばによるコミュニケーションのたえざる流れ、可視・不可視を問わず張り巡らされたネットワーク、制度とそれを超えでる力との葛藤――これらは美の基盤であり、同時に美的対象でありえます。もちろんこれが、文化の本質でもあります。そして「美しいもの」は、モノとして美しいのではなく、絶えず動いてゆくわたしたちの生活環境の中ではじめて美しくもなり、醜くもなるのです。
こういった観点を前提としつつ、個人のマナーから身体、死生観、芸術、宗教、果ては国家の美までを、射程とします。
-----------------------------------------------
授業計画
1.
「生活環境美学」とは何か
2. 「生活環境美学」の系譜
3. 消費における〈無感性化〉
4.
日常とアートとの間
5. 食と日本の現在
6.
「感性」とは何か/
機能の感性化(感性価値創造の現在)
7. 商品化される自然
8. 美は実用的なものか?
9.
陶酔について:
「ギリシア悲劇」から「ジャニーズ」まで
10.
同上
11.都市環境とエートス
12.〈日本的感性〉について考える(1):
カワイイと萌え
13.〈日本的感性〉について考える(2):滅びの美学
14.
同上
15.国家と美
|
|
|
現代哲学の諸問題 |
文化構想学部 秋学期 |
(副題:文化的共生の倫理と哲学)
講義概要
現代は、世界的市場の形成と情報化の中で、よい意味にせよ悪い意味にせよグローバル化・ボーダーレス化の急速な進行に直面している。とりわけ無差別テロの頻発、地球環境の破壊などの負の問題に対しては誰もが危機感を強め、国境を越えた対話と対策が急務であることを自覚している。だがこうした危機感が世界的に共有されているにもかかわらず、国家間・民族間・宗教間・文化間の対立は依然として解消される気配がない。世界的規模での破壊と世界的規模での連帯。この現実を踏まえたうえで本講義においては、複合的でありかつ根本的なディレンマを内包する社会状況における「共生」の可能性を、現代哲学が取り組まなければならない根本問題の一つとして、「文化」という観点のもとにわかりやすく具体的に検討する。
その際に本講義が手がかりとするのは、現代哲学の主要な源泉のひとつであるニーチェ思想である。制度と自己とを徹底的に対立させることによって生のあり方を根底から問い直した後期ニーチェの見解は、今日の状況を読み解くための重要な示唆を与えてくれるであろう。
ちなみにこういった問題設定が、異文化理解、生活環境、比較文化を語る際の根本的視座をもたらすであろうことは言うまでもない。
|
|